夜昼転換

 

   私は約二十数年間に渉って治療した患者は無慮数万人に上ったであろう。その体験から得た結論は一言にしていえば 「病気の原因は薬剤である」という事である。凡ゆる病患の原因を探究すればする程、悉く薬剤ならざるはないのである。もし人類が之に目覚めない限り何時かは滅亡に至るべきは一点の疑う余地はない。斯の如き恐るべき薬剤を救世主の如く信頼し、随喜し、不知不識の間に弱体化し生命を短縮させるというのであるから、「愚かなる者よ汝の名は文化人なり」と言うも敢えて過言ではあるまい。戦争も飢餓も、薬剤に比ぶれば物の数ではない。

  斯く曰う私の言葉は余りに極端であるかも知れない。然し私はそうは意はない。唯私がはっきり知った事実ありのまま些かの誇張もなく叙べたまでである。そうして私が最も不思議に思う事は世界に於て最高度の文明国と謂はれる国が此の事に未だ気の付かない事である。原子爆弾の原理は発見し得ても、医学の誤謬は発見し得られない事である。戦争犯罪者とは誤れる国家主義によって他国を侵略し、他民族を殺戮した処の許すべからざる徒輩である事はいまでもないが彼等の罪悪は或る一定期間だけであって、その野望は遂に打ち砕かれるに到る事は吾々が現に今視つつある処である。然るに医学のそれは数千年前からの持続的罪悪であるが、其の事に気付かないばかりか反って医学とは聖なる職業であり、仁術でさえありと思惟する観念に重大性がある。

  又斯うも言えると思う。それは人智の発達程度が医学の誤謬を発見するまでに至っていない事である。然し乍ら之には理由がある。それは次に説く事によって読者は諒解するであろう。霊界と現界との関係に就ては前項に説いた如く(略)、現界の凡ゆる事象は霊界の移写であるとして、茲に霊界に於ては、最近に至って一大転換の起りつつある事で、それを知る事によってのみ凡ては判明するのである。本来天地間凡ゆる森羅万象は、曩に説いた如く、霊界と現界との両面の活動によって生成化育し、破壊し創造しつつ、限りなき発展を遂げつつあるのであるが、之を大観すれば無限大なる宇宙であると共に、無限微の集合体である所の物質界でもある。それが極まりなき転変によって停止する所なき文化の進歩発展がある。そうして、心を潜め之を静かに稽(かんが)うる時、宇宙意思即ち神の目的と其の意図を感知しない訳にはゆかないであろう。

  そうして一切に陰陽明暗があり、夜昼の区別がある。又春夏秋冬の変化や万有の盛衰を観る時、人生にもよく当て嵌まるのである。又総てに渉って大中小の差別あり、之を時に当て嵌める時、即ち一日に昼夜の別ある如く、実は一年にも十年にも百年、千年、万年にも昼夜の別があるのである。然し乍ら之は霊界での事象で、現界に於ては一日の昼夜のみ知り得るに過ぎないのである。此の理に由って、今や霊界に於ては何千年目かに当然来るべき昼夜の切換え時が来たのである。之は重要事であって、此の事を知らない限り本医術の原理は判り得ないのである。と共に之を知る事によって、本医術は固より世界の将来をも見通す事が可能となり,茲に安心立命を得らるるのである。然らば霊界に於けるこの何千年目かの昼夜の切換えが現界に如何に反映しつつあるかを説示してみよう。

  右の意味によって、霊界に於ける世界は今日迄夜であった。夜の世界は現界と同様暗くして、定期的に月光を見るのみである。勿論水素が多く、月が光を隠せば星光のみとなりそれが曇れば真の暗黒となる。これが移写せる現界の事象に徴(み)ても瞭かである。即ち今日迄の世界、国々の治乱興亡の跡や、戦争と平和の交互に続く様相等は恰度月が盈ちては虧ける如くである。然るに天運循還して今将に昼と転換せんとし、恰度その黎明期に相応するのである。そうして霊界に於ける夜昼転換の結果として、人類が未だ経験せざる驚ろく可く、悚(おそ)るべく、歓ぶべき一大変化が起る事である。而もその端緒は既に表はれ始めている。 先ずそれを説明してみよう。

  私が曰う昼の世界とは現界のそれと同じく、まず東天に日輪の光芒が現はれるのである。視よ、地球の極東日本ー即ち日本に於ける一大変革である。此の国は今や夜の文化即ち既成文化崩壊が開始されたのである。見よ重要文化都市の崩壊、産業経済の致命的状態を主なるものとし、人的には特権や指導階級の全般的没落等々は全くそれが為である。そうして次に来るものそれは昼の文化の建設であるが、之等も既に表はれかけている。視よ、日本に於ける徹底的武装解除に次いで民主主義の擡頭である。此の二つの現実は、日本に於ては建国二千六百年以来洵に空前にして予想すら出来得なかった処のものであるが、又世界永遠の平和確立への第一歩でもあろう。

  本来夜の世界とは闘争、飢餓、病苦に満ちた暗黒時代であるに反し、昼の世界とは平和、豊穣、健康等の具備せる光明世界である。現在の日本、それはよくその転換の様相を表している。 然し乍ら、東天に昇り初めた太陽は軈(やが)て天心に到るであろう。それは何を意味するか、言う迄もなく、全世界に於ける夜の文化の総崩壊であると共に、昼の文化が呱々の声を挙げる事である。それは凡そ予想し得られよう。何となれば日本が既に小さくその模型を示しているからである。而も世界の決定的運命は目前に迫りつつある。恐らく何人と雖も此の框(かまち)から免れる事は出来得ない。唯苦難をして最小限度に止め得る方法のみが残されている。然しその方法は此処に一つある。即ち本医術の原理を知って昼の文化創造の一翼となる事である。聖書の一説に曰く「普く天国の福音を述べ伝えらるべし、然る後末期到る」と、之は何を指示しているのであろうか。私は信ずる。それはこの私の著述が右の使命を完うするのであろう事を!

  私は本医術の原理を説くに当って世界の運命にまで説き進めて来たが、之は重要事であるからである。それは本医術の原理発見も、その根本は夜昼転換という一点に懸かっているからである。既に説いた如く、病気の原因は人間霊体の曇りにありその曇りを解消する。それが病気治癒の唯一の条件でありとしたら、本医術発見以前の世界にあっては何故発見出来得なかったという疑問であるが、その理由は斯うである。

  嚢に説いた如く病気治癒の方法に二つある。一は毒素を浄化以前に還元する。即ち固め療法であり、二は右と反対に毒素を溶解し排除する方法である。既存医学は前者であり、本医術は後者である事も読者には既に充分認識されたであろう。そうして本医術の原理が、人体より放射する一種の不可視的神秘光線でありとしたら、此の神秘光線の本質は何であるかというと、それは火素を主とせる一種の人体特有の霊気である。故に施術の場合、火素の多量を要する訳であるが、昼の世界に嚮(むか)うに従って、霊界に於ける火素は漸次増量する。何となれば、火素放射の根源は太陽であるからである。

  そうして火素は治病に効果のある以外今一つ重要事がある。それは霊界に於ける火素の増量は、人体の浄化作用をより促進せしむるという事である。即ち霊界の変化は直接霊体に影響する。火素の増量は霊体の曇りに対し、支援的役割ともいうべき浄化力強化となる事である。従って病気は発生し易くなると共に既存医療の固め療法の効果が薄弱となり終に不可能となる。例えば夜の世界に於ては一旦固めた毒素は再発まで数年要したものが漸次短縮され、一年となり、半年となり、三月となり、一ヶ月となるというようになり、終には固める事は不可能とさえなるのである。

  之に就て最も好き例は彼の種痘(天然痘の予防接種。人類初ワクチン)である。之は日本に就ての実例であるが、数十年前は一回の種痘によって、一生免疫されると謂われたものが漸次期間短縮され十年となり五年となり、最近に至ってその効果は非常に薄弱になった事である。其の他種々の病気にしても年々増加の傾向を高めつつある事も見逃すべからざる事実である。 以上によってみても、漸次夜から昼に転移しつつある事を知るであろう。全く夜の期間に於ける病気治療の方法としては、溶解よりも固める方が有利であった。それは毒素溶解に要するだけの火素が不足であったからである。従而次善的方法として固める方法を執るの止むを得なかったのである。

  それが終に人類社会に対し短命、病気、飢餓、戦争等の苦悩の原因となった事は、実に悚るべき誤謬であった。以上の如く夜昼の転換を認めるとして、其の時期は何時頃であろうか。私は最後の転換期は茲数年は出でないと惟う。何となればそれに就て好適例がある。それは私の弟子数万人が病気治療に際し、年一年否一ヶ月毎に治病の効果が顕著になりつつある事である。即ち曩に三ヶ月を要した同程度の病気が、一ヶ月となり半ヶ月となり、十日となり三日となるというように、時の進むに従い短縮されつつある事で、之は異口同音に何れも唱えている。要するに之は霊界に於ける火素増量の速度を示している事であり、昼の世界の刻々迫りつつある事を示唆せる証左でなくて何であろう。

 


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